カニバ/パリ人肉事件38年目の真実 ネタバレなし感想
この作品「カニバ/パリ人肉事件38年目の真実」は、1981年に実際に起こった事件を扱ったドキュメンタリー映画。
猟奇的殺人事件の犯人として逮捕されたのは、当時パリに留学していた日本人・佐川一政でした。
事件から30年後、彼は脳梗塞を発症し歩くことも話すことも上手にできなくなりました。
実の弟が彼の介護をしながら、二人はひっそりと暮らしています。
そんな彼の心の奥底にある「カニバリズム」への興味や執着について、フランスの撮影クルーが密着取材した作品です。
当時は、人間を殺めてその肉を口にしたという点だけがクローズアップされ、佐川の心の闇や家庭環境などは深く掘り下げて考えられませんでした。
親や弟との奇妙な関係性は、彼が子どもだったからということだけで、微妙なバランスを取っていました。
しかし彼が青春時代を迎え、性的な衝動を覚えるような歳になったからこそ、彼の根幹にあるゆがんだ欲求が目覚めてしまったのです。
まさに人間の持つ狂気と言えるかもしれません。
もし私たちにそんな欲求があったとしても常識や倫理観、自分の生活などを守ることを優先して、決して行動には移さないはずです。
佐川の場合、彼にそういったものが欠如していたことは間違いなく、家族との関係の中で社会性を育てることができなかった点は、全くの悲劇だと感じます。
観覧後は後味の悪さだけが残りましたが、「家族」という一番小さなコミュニティーが、どうしても閉鎖的になってしまう日本人こそ、この作品を観るべきではないのかと思いました。